2016.11.01
地域史と世界史
出版社:ミネルヴァ書房 / 発行年:2016年10月 / ページ数:338ページ
時系列に沿って読み解く縦の歴史、同時代の地域を結んで読み解く横の歴史。本書は、これまで分析の主体となって来た「国」や「地域」の概念を改めて批判的に精査し、縦糸と横糸の織りなす時空間によって、我々に新しい歴史の景色を提示するグローバル・ヒストリーの試みです。羽田 正責任編集、『MINERVA世界史叢書』第1巻です。
序 章 地域史と世界史(羽田 正)
1 歴史研究と時空間
2 一国史や地域史と新しい世界史
3 新しい世界史という織物
第Ⅰ部 地域史と世界史の接続・不接続
第1章 古琉球から世界史へ(村井章介)
——琉球はどこまで「日本」か
1 「日本」史と地域史
2 古琉球史の射程
3 古琉球に関する文字史料
第2章 東アジア(貴志俊彦)
——相関する地域・交錯する地域像
1 「東アジア」という地域像
2 日本における東アジア地域認識の推移
3 「東アジア」アイデンティティと中国・韓国
4 21世紀の東アジア論へ向けて
第3章 イスラーム世界(羽田 正)
——歴史を語る空間概念枠組みの功罪
1 「イスラーム世界」という概念の成立とその日本語への導入
2 イスラーム世界史研究の歴史
3 「イスラーム世界」と世界史の関係
第4章 インド洋(鈴木英明)
——海から新しい世界史は語りうるのか
1 海への注目と可能性
2 歴史叙述の舞台としてのインド洋海域の成り立ち
3 インド洋海域史研究からのレッスン
4 海から世界史は語りうるのか
第5章 中央ユーラシア世界(杉山清彦)
——方法から地域へ
1 方法としての「中央ユーラシア」
2 実体としての中央ユーラシア
3 「中央ユーラシア」をどう定義するか
4 中央ユーラシア世界と世界史
5 中央ユーラシアの「周縁化」と「実体化」
第6章 ラテンアメリカ(高橋 均)
——20世紀を通じての自己診断の変遷と後進性の過剰演出
1 20世紀ラテンアメリカの自己診断における「後進性」の過剰演出
2 個人的な体験——アフリカの某国某市のバスターミナルにて
3 最貧国の近現代史モデルの構想
4 中進国ラテンアメリカにおける後進性の過剰演出の根源は何か
第Ⅱ部 都市から眺めた1870年の世界
第7章 1872〜73年の那覇(渡辺美季)
——イギリス船ベナレス号の遭難事件から見た「世界」
1 宜名真のオランダ墓
2 近世琉球の「世界」
3 琉球史料から見た遭難事件
4 イギリス史料から見た遭難事件
5 事後の経緯と明治政府
6 那覇の変化
第8章 上海から見た1870〜74年の「世界」(古田和子)
——財政とアヘン
1 分析の課題と視角
2 貿易の概観と実態経済
3 寒防・海防をめぐる財政の綱引きと上海の商人
4 アヘン市場をめぐる綱引き
5 上海と「その他の世界」
第9章 スラバヤ(大橋厚子)
——海軍・砂糖輸出・機械工業の都市
1 19世紀の国際関係とスラバヤの発展
2 1870年頃のスラバヤの概観
3 造船所・機械廠・優秀な工場労働者
4 優秀な土着の職人たち
5 郊外の砂糖農園
6 グローバルなシステムのなかのスラバヤ
第10章 ボンベイ(井坂理穂)
——エリート層から見た「世界」
1 イギリスの植民地支配とボンベイ
2 ボンベイのエリート層の諸活動
3 出版物、結社を通じてつながる世界
第11章 モスクワ(森永貴子)
——1872年科学技術博覧会への眼差し
1 1870年前後のモスクワ
2 協会設立ブームと愛国主義の動き
3 科学技術博覧会とその反響
第12章 サンフランシスコ(貴堂嘉之)
——西部開拓・帝国都市・近代
1 世界とつながる
2 サンフランシスコの都市開発と人種・民族交錯史
第13章 アレクサンドリア(加藤 博)
——文明の交差する地中海近代都市
1 中心と周縁のネクサス
2 副王イスマイールのエジプト
3 国際博覧会文化とイスラーム世界
4 世界経済とエジプト
5 近代アレクサンドリア
6 問われている近代
人名・事項索引