活動報告

2018.10.29

羽田教授: EHESSでの討論会/ Prof. Haneda: Round-Table Discussion in EHESS (2018.10.19)

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2018年10月19日(金)、パリの社会科学高等研究院(EHESS)で、羽田正の近刊書Toward Creation of a New World Historyの内容をめぐる討論会が開催された。「Savoirs, institutions, économies : histoires connectées et dynamiques globales(様々な知、制度、経済:接続された歴史とグローバルな動態)」と題する授業の第1回として、授業担当者のAlessandro Stanziani教授が企画したもので、羽田は著者としてこの会に出席した。

授業とはいえ、正規の履修者である大学院学生十数名に加えてEHESSや他研究機関の研究者が10人ほど出席しており、実質的には「研究会」の性格を持つものだった。はじめに羽田が”Some Reflections on Toward Creation of a New World History”と題して、本の内容を紹介するとともに、日本語の原著刊行後7年が経ち、その内容の何をどう変更する必要があるか、何を付け加えるべきかについて説明した。次いで、EHESS日本研究所のGuillaume Carré教授がコメントとして、羽田の最近の研究、特に英語にまだ翻訳されていない近刊書『グローバル化と世界史』の内容を紹介した。その後、出席者と羽田の間で、およそ1時間半質疑と意見交換が活発に続いた。

同じことを論じているつもりでも、言語が異なるとその文脈や理解は異なる、英語だけでの議論は価値の多様性尊重に逆行するとする羽田の主張は、教室では好意的に受け入れられていると感じた。ただし、一方で従来の「普遍」を批判し多様性を強調しながら、他方で「地球の住民」という新しい普遍を追求するのは矛盾ではないかというもっともな指摘もあった。正規の授業終了後は、Stanziani教授宅に場所を移し、GHCパリ拠点のメンバーたちとの間で友好的かつ意義深い意見交換が深夜まで続いた。

歴史記述とその理解は、著者と読者の立ち位置、すなわち、アイデンティティと深く関わるので、この概念の意味と歴史についてより理解を深める必要があると感じた。

(羽田 正)

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